ふじ楽いず楽

富士山周辺と伊豆の観光スポットや遊ぶところを紹介するブログです

富士山麓の国指定天然記念物 雁ノ穴を観る

国指定天然記念物 雁ノ穴

 

また穴ですよw

雁ノ穴は北富士演習場の北西側の外れにあります

 

雁ノ穴周辺

雁ノ穴周辺

 

看板の文字起こしです 

国指定天然記念物

雁ノ穴

昭和七年十月十九日 指定

所在地 富士吉田市上吉田雁ノ穴

管理者 富士吉田市


「雁ノ穴」とは北口本宮浅間神社の南方約3千メートル、標高千~千二十メートルにあたるこの辺一帯の役ヘクタールに散在する、二つの溶岩洞穴と十六個の溶岩樹型との総称である。

「崩れ穴」は溶岩洞穴の一つで、長さ五十七メートルそのほぼ中央部で天井が崩れて二分されている。

崩れ落ちた部分が溶岩溝で崩れ穴と俗称されている。

崩れ穴が入り口で同口はほぼ南北に横洞となってのび、南側横洞の入り口近くには盛夏の候には黄色く輝く「ヒカリゴケ」が認められ、北横洞にも貴重な「子持ちキクガシラ」(コウモリの一種)がすんでいる。


崩れ穴の北にある比高六メートルの棍棒山は円錐形の溶岩で、その中程に深さ七メートルの小噴火口がある。附近から北の方小倉山に向かう溶岩溝は次第に幅を広めて延長約百五十メートルにも達し四ヶ所に溶岩トンネルがある。

雁ノ穴丸尾(溶岩)は、噴出の際多量のガスを発散させたため、多孔質で軽く、また、古井戸状の竪穴が多いなど他の溶岩洞穴にくらべ特徴のある火山現象として学術上極めて貴重な記念物である。

昭和五十二年一月

山梨県教育委員会
富士吉田市教育委員会


というとても珍しいとされてきた場所です。

 

入山鑑札が必要です

その割にはあまり有名ではありませんね。
何故かといえば、せっかくの天然記念物なのに立ち入り禁止区域にあるからです。

所在地である富士吉田市上吉田雁ノ穴(そのまんまの地名ですw)は北富士演習場内にあります。

 

そう、自衛隊の管理している国有地の中なのです。

 

そのため、観たいからといってもそうホイホイと訪れることはできません。
これでは観光資源として宣伝して人を集めることはとてもできません。入ろうとしても追い出されます。

また近年になり別の理由からも宣伝しにくい状況になっている可能性があります。
まぁ、それについては後ほど触れるとしまして、まずは現地の紹介をしましょう。


雁ノ穴は北富士演習場内に位置しますが、ここは一般には立ち入り禁止区域となっています。

しかし、もともとこの地は地域住民にとっても生活の一部の場であるため、現在は立ち入り日が設けられていて、地域住民に限って林業や山菜摘みなど明確な目的があれば入ることが許されています。


静岡県民の私はここではよそ者なのでそのまま入ることはできません。

でも全く手がないとはないんですね。

富士吉田市外二ケ村恩賜県有財産保護組合という所に入山鑑札(有料)を発行してもらえば、組合の管理する地域に立ち入ることができます。
この地域内に北富士演習場の敷地も含まれています。

 

但し、遊びに行きたいからと告げても発行してもらえませんよ。
これは地元の方が従来から続く生業などを執行するための制度なので、それなりの理由がないと発行していただけません。

私の場合は演習場付近をうろうろして写真を撮りたかったという理由なんですが。

以前はもっと緩かったのかもしれませんが、どうやら敷地内にオフ車で乗り込んでヒャッハーする輩が絶えないようで厳しくなっているようです。


というわけで入山鑑札を事前に事務所を訪れて頂いておきました。

 

雁ノ穴を目指す

雁ノ穴は北富士演習場の北西側の外れの森林地帯の中にあります。

敷地の西隣に隣接して走る道路からも入り口はあるのですが、地図で確認する限りあまり近いとは言えません。

それに詳細な場所がわからないので不安です。

入山日とはいえ、こんな場所で迷子になったら人に出会える確率はかなり低いので嫌です。

まぁ、自衛隊の敷地内のでいざとなれば迷子の旨を伝えればすぐに救助が来てくれるかもしれませんがw


それでもせっかく鑑札を頂いたので雁ノ穴に近い演習場内から向かうべく敷地の西のゲートから乗り入れました。もちろん入会日です。

道は車両が通るようになっているのでオフロード走行の経験があればそれほど悪くはありません。道から外れるようなことをすれば別ですが。

 

雁ノ穴の近くを目指して走りましたが、あまりに周囲の環境が良いのでちょっとお散歩。

 

北富士演習場からの富士山

北富士演習場からの富士山

 

でも3回ほど誰何されました(汗

 

まぁ、物珍しくて目的地以外の所をうろちょろしていたのでいたしかたありません。
明らかに不審者ですしw
鑑札がなければ追い出されます。

自衛隊の方々は物腰柔らかに、草刈りしているから近づくと危ないとか、今日は森の中に猟銃会が来ていて発砲しているから危険だとか丁寧に教えてくれました。

 

北富士演習場から山中湖方面

北富士演習場から山中湖方面

 

できればもっとはっきりと山中湖を望む景色を見たかったのですが、撃ち殺されるのは嫌なので当初の目的に戻ります。

 

雁ノ穴へ

実は途中で雁ノ穴の案内らしき立て札を確認していたのでその場所に戻ります。

でもその場まで行って途方に暮れます。

立て札以外何にもない木立が広がっているだけです。
人の手が余り入っていない自然林はとても綺麗なのですが。

 

幸いなことに奥の方に軽トラが駐まっていました。
人がいそうなので近寄り尋ねると崩れ穴の場所を教えてくれました。

云われた通りに木立の中の道を進むと分岐があり、小さいですが標識もあります。

 

雁ノ穴標識

雁ノ穴標識

 

そちらの道を辿っていくとすぐに崩れ穴に到達しました。

 

崩れ穴

こちらが国指定天然記念物の雁ノ穴の崩れ穴です。木立の中にポカリと空間が開いて地面がえぐれています。

 

雁ノ穴 崩れ穴

雁ノ穴 崩れ穴

 

崩れ穴は長さ57メートルの溶岩洞穴の中央附近が崩落している場所です。
北側には子持ちキクガシラがいるとされていますが、穴が小さくよくわかりません。

 

雁ノ穴 崩れ穴 北側入り口

雁ノ穴 崩れ穴 北側入り口

 

這いずれば入れるのかもしれませんが、そこまでする気はありません。中の環境を乱しかねませんし。

 

雁ノ穴 崩れ穴 南側入り口

雁ノ穴 崩れ穴 南側入り口

 

対して南側は人が入れるサイズで口を開けているのでそちらに向かいます。

溶岩洞らしく内部の表面はざらざらですが全体的に造りは滑らかです。

 

こちらには夏場ならヒカリゴケがあるとのことですが、紅葉のシーズンでは確認できませんでした。

 

雁ノ穴 崩れ穴南穴突き当たり

雁ノ穴 崩れ穴南穴突き当たり

 

穴は少し進むと埋まっているのか行き止まりとなり、頭上に小さな穴が開いているだけです。

外に出て溶岩洞穴を北方向に辿ります。

 

棍棒山と記念碑

全体の写真を撮り忘れてしまいましたが、この先に数メートルの円錐形の盛り上がりがありました。

「比高六メートルの棍棒山は円錐形の溶岩で、その中程に深さ七メートルの小噴火口がある」

の棍棒山ですね。
山全体の写真はないのに登っているときの写真はありました。

 

雁ノ穴 棍棒山

雁ノ穴 棍棒山

棍棒山附近にはいくつか溶岩樹型もありました。

 

ここからさらに北方向に溶岩洞穴があっったことを示す溶岩溝が森の中を貫いていきます。
しかし棍棒山に登るとその溶岩溝の左の方に石碑が建っているのが見えましたので近づいてみます。

 

特別天然記念物雁ノ穴記念碑

特別天然記念物雁ノ穴記念碑

 

やっぱりここが国指定天然記念物の雁ノ穴で間違いないみたいです。
こんな大層なものを建ててありますが、目にする人は年に何人くらいなのでしょう?

 

溶岩溝と溶岩隧道

ここから先は北方向に溶岩溝が続いています。
細長い窪みですね。

 

雁ノ穴 溶岩溝

雁ノ穴 溶岩溝

でも以前は溶岩洞であったのでしょうか。

所々に崩れ残った溶岩隧道があります。

 

雁ノ穴 溶岩隧道

雁ノ穴 溶岩隧道

潜る気になれば潜れるくらいのサイズはあります。

 

溶岩溝はこの先、木立の中を抜けていますが、足下も悪く歩きにくいのでここで終わりにします。

 

現在の雁ノ穴

 

さて国指定天然記念物「雁ノ穴」を見てきたわけですが、実はちょっとした問題があります。

 

詳しいことはこちらのブログに書かれています。

プロフィールに〝赤色立体地図を2002年に発明〟とありますのでブラタモリにも出演していたあの方のブログかな?

 

tchiba.hatenablog.com

 

 

かいつまんで書きますと、

2003年に雁ノ穴火口を調査した結果、雁ノ穴溶岩流の火口としては疑わしいという結論になったようです。

はぁ?


1)雁ノ穴の断面に火砕丘を示すようなスコリアやスパッターが認められない

2)雁ノ穴周辺に、普通の火口付近で期待される火山弾が認められない

3)雁ノ穴の火口の内部が一般的な火口がすり鉢型をしてるのに対し、ほぼ垂直で、周囲の斜面も火砕丘と比較して、きわめて急である

これらの特徴は、溶岩トンネルのスカイライトの上に生じる、2次的な溶岩噴出現象、すなわちホルニトと一致する。

 

ホルニトとは?

溶岩が流れると外側から冷えて内部だけが柔らかく流れ出して空洞を作ることがあります。それが溶岩洞です。

その溶岩洞内の天井に穴が開いて吹き出して二次流出することがあります。

すると吹き出した溶岩が堆積して小山のような形状を成すわけです。

 

伊豆大島に見られるホルニト

伊豆大島に見られるホルニト

 伊豆大島ジオパーク・ミュージアムからお借りした写真です。

伊豆大島に見られるホルニトですが地面から盛り上がっていますね。

溶岩の粘度や吹き出し方で堆積の仕方、形に違いが出るのでしょう。棍棒山はもう少しなだらかですね。まぁ、風化したのかもしれませんが。
ただ棍棒山には中に綺麗な吹き出し口が開いているようです。

 

火口とするのは適切ではない

雁ノ穴はこのような調査結果から――溶岩トンネルの末端部に生じた、出口であり、ここを雁穴溶岩の火口であるとするのは、適切ではないとした――とあります。


えーと、つまり、雁ノ穴は火口ではなく溶岩洞の出口に過ぎないと。

「雁ノ穴丸尾(溶岩)は、噴出の際多量のガスを発散させたため、多孔質で軽く、また、古井戸状の竪穴が多いなど他の溶岩洞穴にくらべ特徴のある火山現象として学術上極めて貴重な記念物である。」

という国指定天然記念物の特徴は否定されてしまったわけですよね?

 

どうするのこれ?

 

ホルニトですとあちこちで確認できる現象で国指定天然記念物の価値はないのでは?

調査が進んでいろいろなことがわかりより正確な調査が進むのは大歓迎です。

ただ天然記念物として扱われてきた雁ノ穴は今後どのような扱いになるのか気になるところですね。

天然記念物の指定を外すのか、場所が場所だけに人知れずひっそりと廃れていくのを待つのかな?

 

ただ雁ノ穴そのものは溶岩洞の出口に過ぎないのですが、それはつまりその上流に溶岩を噴出させた火口の存在を示唆しています。

 

報告では、雁ノ穴の南には南北に伸びる幅5-10m、深さ2-10m、長さ500mの一直線に伸びる溝が確認され、それは割れ目火口であると考えられたようです。


これは富士吉田の市街地の近くに火口が発見されたこと意味します。
こちらの方が重要ですね。


雁ノ穴がいつまで国指定天然記念物であるのかはわかりませんが、気がついたら指定解除されているということもあり得ます。

行くのなら今のうちかも。でもその価値はあるのかはちょっと不明w

ただ周囲の木立は秋に訪れると綺麗な紅葉を見せてはくれます。人がいなくて静かですしw

それを含めて見学に訪れるのもいいかもしれませんね。


上でも書きましたが雁ノ穴は北富士演習場内に位置します。
訪れるときは地元の方でなければ事前に富士吉田市外二ケ村恩賜県有財産保護組合で入山鑑札を発行してもらいましょう。

 

 

雁ノ穴の基本情報

地図

近隣からのアクセス

場所は北富士演習場内西側に位置します。

西側に隣接する701号から入るか、演習場の中を抜ける必要があります。
どちらからでも標識はあるようですが、初見ですと分かりにくいと思います。

公式情報

403-0005 富士吉田市上吉田雁ノ穴

お問合せ先

ふじよしだ観光振興サービス

電話番号 0555-21-1000

メールアドレス kankou@mfi.or.jp

その他情報

一年を通して、日曜日以外は陸上自衛隊の演習地であることから、入会日と認定されている日曜日、及び年末年始やお盆直前の数日以外は、通常は立ち入る事はできません。また、不用意に樹型に近づくことも危険が伴うので、天候の確認や十分な装備が必要です。

外部リンク 雁の穴/富士の国やまなし観光ネット 山梨県公式観光情報

外部リンク 富士吉田市外ニヶ村恩賜県有財産保護組合(恩賜林組合)