国の天然記念物および富士箱根伊豆国立公園指定の大室山の山焼き
※こちらは昨年秋口の写真です。記事内に他にも何枚か混じっています。
大室山の概要
伊東の大室山といえばお椀を伏せたような独立峰としてとても有名な山ですね。国の天然記念物および富士箱根伊豆国立公園に指定もされています。
リフトで簡単に山頂まで登れお鉢めぐりできるので人気の観光スポットです。
まずこちらの大室山が、なぜ絵に描いた山のようなへんてこな形をしているかですが、これは典型的な単成火山のスコリア丘な形なのです。
スコリア丘のスコリアとは岩滓(がんさい)とも呼ばれる火山噴出物で、多孔質な溶岩の固まりです。これは玄武岩質のマグマが噴出する際に減圧され、中に含まれていた水分などが揮発したせいで固まるときに多孔質となります。
ようは火山に登ったときによくある軽石のように穴の開いた黒っぽかったり赤っぽかったりするあのごつごつした石塊ですね。手に持つとちょっと軽いあれです。
このスコリアが噴火の際に火口から粘り気の弱い溶岩のしぶきとして放物線を描いて同心円状に堆積し、山と積まれたのがスコリア丘になります。
つまりここ大室山はこのガラガラとしたスコリアが文字通り山のようにいっぱい堆積しているということです。
山頂でリフトを降りると左側に新しく工事をした部分がありますが、そこに掘り出されたスコリアが敷き詰められている場所があります。ここ大室山のスコリアは酸化鉄が多いのか、かなり赤味を帯びた綺麗な色をしていました。
大室山の噴火はおよそ4000年前の出来事だそうです。
流れ出た溶岩は西方向では矢筈山との谷間に流れ出て堰止め湖を形成しました。明治時代になるとその池の水を抜くためのトンネルが掘られ、そこには田んぼが作られました。その姿は今でも大室山の上から確認できます。山間に不自然なほど真っ平らに見えるのですぐに分かります。
そして北の方は一碧湖に一部が流れ込み島を形成し、相模灘に流れ込んだ溶岩流は城ヶ崎海岸の素晴らしい景色を形作ったのです。
大室山は伊豆東部火山群の中で最大のスコリア丘でもあるのです。
大室山の山焼き
さて今回訪れた山焼きなのですが700年ほどの歴史を誇る行事なのだそうです。
こちらも稲取細野高原、あるいは富士山の裾野で行われているのと同じく、かつては茅場であり、茅の育成を促すために火をかけてきた地域です。
ただこちらが他と異なるのは山であること。
横に広がるのではなく、縦方向に伸びる茅場はそうはないでしょう。
火は横よりも縦に延焼しやすいのは言わずもがなですが、そのお陰で大室山の山焼きは一気に燃え上がります。
その光景はなかなか凄まじく、巨大な炎に天まで伸びる煙、周囲に舞い散る灰と充満する煙たい空気と早々お目にかかれる光景ではありません。
山裾で火を放ち山頂まで火が舐めるまで僅か15分。一年間でたった15分しか見ることが適わない劇的な瞬間です。
その為、この光景を一目見ようと当日は多くの人々が駆けつけます。
かく言う自分もまた今年は長年の念願が叶い始めて足を運びました。
しくじったんですけどね……
山焼きに行ってきたよ
イベとぴの方に山焼きの記事を書いているのですが、17日の朝にまた延期するかどうか確認したところ、今日は決行するとなっていました。
ブログの記事を更新すると共に、果たして今日行くべきか迷いました。ここのところ富士山の日が近くてイベとぴ用の記事を纏めなければならないのですが、これを調べるのが大変で。
でもせっかく今日行われると確認できたのに見に行かない手はないなー、と思い決心しました。
まさにブログを書き始めた効果ですね。以前までは終わってからニュースを見て今年も行きそびれたかー、と思っていたのですから。
しかし急に決めたので仕度が出来ていなくて手間取り、出発時間は遅めに。
それが仇となったのか、往路のあちこちで車が多く混雑気味で予定通り進めません。
時間短縮のために冷川から伊豆スカイラインを走ります。でもスカイラインを出てすぐに路線バスが前方を走っています……
バスのペースで山を降っていくと、大室山の近くに辿り着いたのが点火時間である正午の15分前!
もしかしてギリギリ間に合う?
さくらの里の駐車場に車を突っ込んで駆け込めば間に合うかもしれない。と思ったのも束の間、目前に大室山が見えているのに車が詰まって動かなくなってしまいました。
渋滞です。
すぐそこに見えているのに列はゆっくりとしか動きません。路肩に駐めてとも考えましたが、スペースに余裕のある場所は既に先客で一杯です。
そして正午になる頃には車列は完全に停止してしまいました。
大室山の周囲にはリフトの駐車場を含め、かなりの規模の駐車スペースがあるので十分に車を駐める事ができるだろうと予測して行きましたが甘々でした。
どうやら現地では駐車場のキャパをオーバーした車で溢れ、路上で渋滞となり身動きできなくなっているようでした。
そしてそのまま正午を迎え、路上で山に火が放たれているのを見ることになりました。
はじめは煙が充満するだけでしたが、そのうち大きな火柱が伸びていく光景が見えてきました。
※車上からフロントガラス越しに撮影しています。外は相当焦げ臭いですし、窓を開けると車内にまで灰が舞ってくるので窓も開けられません。
その大きな火柱がどんどん山腹を舐めるように上に登り、山頂に向かうほどその速さも増すように見えます。
※凄い煙です。車の周囲に灰が舞っています。
表に出て写真を撮りたい欲望に悩まされますが、運転中に車から離れることも出来ずにフロントガラス越しに山焼きを見ました。
しばらくしますと山頂付近が充満した煙で何も見えなくなりました。炎も見えないようです。終わりかな、と思っているとそれまでピクリとも動かなかった車列がゆっくりと動き出しました。
どうやら山焼きは終わったようです。
帰りと思われる車が次々に桜の里の方から出てきます。
そして自分の運転する車もまた動き出しました。
遅いよ!(泣
結局、山焼きは見ることは適いましたが……納得できないよw いつかリベンジですね。
焼きたてほかほかの大室山の山頂へ
山焼きが終わると山頂へのリフトが1時から動きます。
山焼き後にリフトに乗るつもりで、その前に昼食を現地で摂ることを考えているようなら要注意です。
リフト乗り場にはうどんや丼などを食べられる軽食堂とスナックコーナーみたいな売店が一つあるだけです。しかも結構混みます。
またリフトも混んでいます。並ぶことは当然でしょう。でも止まることなく流れているのでそう待たなくてもリフトには乗れますよ。
焼け焦げて黒々とした禿げ山のリフトは見慣れない雰囲気です。
それにしても禿なのに黒々とはこれ如何に?
大室山山頂 お鉢めぐり
さて今回、山焼き直後の大室山へは始めて登りました。
普段でも見晴らしの良い場所なのですが、斜面の草がないおかげで、足許の光景までよく見えます。
ひろびろとした空間がさらにひろびろと感じます。
※それにしても黒いですw 想像していたよりもずっと黒いですよ。山全体、外も中も真っ黒焦げですね。
こちらの山頂には直径250メートルにもおよぶ巨大な火口が口を開けています。
その為、山頂に登るとその火口の縁を巡るお鉢めぐりをすることになります。
360°視界が開けているため、天気が好ければ伊豆諸島から逆側は富士山やその向こうのアルプスの峰なども見えるようですが、生憎この日は薄曇りで視界もそこまで抜けていませんでした。
因みに火口はアーチェリー練習場で練習目的以外での立ち入りは禁止でした。でも道具もレンタルで貸し出しているのでその気があればやってみても良いかもしれませんね。
しかしこの日にやると、お鉢めぐりをしている大勢の人に360°全周からガン見されることは間違いないでしょうw
※海は初島、辛うじて大島の島映が見て取れるくらいでした。
逆側も然り。ただ家を出るときから富士山は雲の中だったのでこちら側はまったく当てにしていなかったのでこんなものかな、と。
お鉢めぐりは切り立った火口の縁の尾根の部分に一周巡らせられている遊歩道を歩きます。
意外と高低差があり、坂がきついところもあります。
火口内の中腹には大室山浅間神社があります。
※写真の稜線にぽつぽつと見えるのはお鉢めぐりをしている人です。まるで黄泉比良坂みたいな写真になってしまいました。
こちらの浅間神社は安産と縁結びの神で、主神は木花開耶姫命(このはなさくやひめのみこと)ではなく、彼女の姉である磐長姫命(いわながひめのみこと)が祀られています。
意外かと思われるかもしれませんが、実は伊豆地方、天城を挟んで富士山と反対の場所では磐長姫命はポピュラーだったりします。思いつくだけでもここ大室山、下田、雲見と磐長姫命との繋がりのある場所がありますね。
因みに磐長姫命所縁の場所では富士山を褒めてはいけません。磐長姫命さん、木花開耶姫命を恨んでいるので罰があたりますよ。
磐長姫命は木花開耶姫命のお姉さんなのですが、美人でよくできた妹を持ったおかげで比較され何かと苦労します。
そのため恨んでいるようですね。でも怖ろしい一面だけでなくご利益もあります。
延命長寿、縁切り、縁結び、安産、家内安全、海上安全などです。ご必要の折にはどうぞ。
大室山浅間神社以外にも鉢めぐりをしていますと途中に八ヶ岳地蔵尊や五智如来地蔵尊などの人々の信仰を感じさせられるスポットもありますよ。
こちらの大室山はパワースポットとしてもとても有名な場所です。観光はもちろん、パワー充填、祈願のためにに訪れてもいいスポットですね。
今回は山焼き目当てで訪れましたが、夏の緑が繁る姿も美しいですし、秋の黄金色の時期もいいものです。冬の見晴らしは空気が澄んでいれば絶景でしょう。そんな感じで一年を通して楽しめる場所ですね。
今回の教訓(そんなたいしたものじゃないw)
さて今回は初の大室山の山焼きを見に行ってきたわけですが、幾つかの注意事項を書いておきます。
行動は早めに(当たり前w
やはり車を駐めてさくらの里からゆっくり見るのが一番だと思いますよ。出来ることなら点火もしてみたいですよね。
もう開花している桜もありますので桜花と山焼きのコラボ写真を狙いたいです。でも多分朝から良い場所は場所取りされていそうですけど。
車で行かずにバスを利用して……といいたいところですが、バスも開始前の渋滞に嵌っているみたいでしたからね。とにかく早めの行動を心がけないといけないでしょうね。
昼食をどうするか決めておくこと
お勧めはスナックコーナーで立ちながら食べられるものを買ってリフトの列に並ぶことです。
もしくは山頂まで我慢して、そこで団子などを食べて小腹を満たす方法です。
山を降りてから遅めの昼食に。事前に探しておいた、お好きなお店でお好きなものを食べる方が良いですよね。
わりと写真が撮りにくい
山頂は周囲が空で明るく、山肌は焼け焦げて黒っぽいです。
コントラストが強すぎて写真は撮りにくいです。
何を撮りたいのかはっきり考えて撮らないと曖昧な絵になってしまいがちです。この日は天候が不安定なので撮り難さに拍車がかかりました。
当日は画角24mm-80mmのレンズ一本しか持っていませんでした。久しぶりに訪れた山頂は思っていたよりも広くて24mmでは画角が足りず、逆に遠景を狙おうにも逆サイドが遠すぎて引き寄せられませんでした。もう少し画角の幅を広く持たせた方が良いかと思います。
さくらの里にも寄りました
さくらの里からの大室山は長閑で良いです
大室山の麓にはさくらの里という40,000㎡に広がる広大な敷地に、約40種1500本の桜が植えられている公園があります。
「公益財団法人日本さくらの会」より、さくら名所100選の地に認定されている桜の名所でもあります。
こちらの公園の特徴はいろいろな種類の桜の木が植えられ、幅広い季節で桜の花が咲いているのを見ることが出来ることです。今回もちらほらとヒカンザクラ系と思われる赤味の強い桜がチラホラと見られました。
公園内には大室山のスコリア丘造成時に崩壊して流れ出たスコリアラフトがあります。
ラフトとは筏のことであり、流れ出る溶岩流に載ってスコリアが浮かび運ばれ、転がりながら溶岩を纏った岩の固まりがスコリアラフトです。
中心部にスコリアがあんこのように固まり、周囲を饅頭の皮ように被う溶岩で固められていることが見て取れます。
他にも溶岩流の流れ道として穿たれた溶岩洞穴である穴の原溶岩洞穴も園内で確認出来ます。
大室山の姿を間近で感じながら桜の景観もよく、地質学も学べるさくらの里はとても面白い場所です。
また天気が好ければ富士山も。とっても――おっとっとw
花見が楽しいスポットですね。
すぐ傍の伊豆高原の桜のトンネルは見事です。
大室山とさくらの里の駐車場等、基本情報
リフト乗り場
地図
さくらの里
地図
大室山登山リフトとさくらの里の近隣からのアクセスと駐車場
伊豆スカイライン天城高原料金所から道なりに降ります。
目の前に大室山が突き当たりますのでそこを左折、少し先のさくらの里の所で左から来る道がくの字に曲がるので、そこを真っ直ぐ。
すぐ左手側に一つ目の「さくらの里の駐車場(池総有財産管理会)」があります。さらに進みますとやはり左手、山と反対側に「大室山駐車場(さくらの里)」があります。
引き続き大室山に沿って進むと左側に「大室山リフト第3駐車場」があり、まもなく大室山登山リフトに到着です。
山側の大室山登山リフト側に「第一駐車場」、道路を挟んだ向かいに「第二駐車場」がありますが、わりと第二駐車場の方がリフトに近かったりします。
大室山登山リフト駐車場 普通車300台 無料
さくらの里駐車場 沢山あります 無料
こちらも参考になるかもしれません。
公式情報
大室山登山リフト
池観光開発株式会社
〒413-0235 静岡県伊東市池 672-2
TEL(0557)51-0258(代)
外部リンク 伊豆高原大室山登山リフトオフィシャルサイト
さくらの里
住所 静岡県伊東市富戸1317住所 静岡県伊東市富戸1317
お問い合せは伊東観光協会まで
受付時間:9時より17時まで(年中無休)
TEL:0557-37-6105 FAX:0557-37-6300
外部リンク 伊豆・伊東観光協会公式ホームページ
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