西伊豆のビーチ(の砂)を比較
西伊豆町の砂2
次は田子地区に入るのですが、この周辺は砂浜のビーチがありません。
砂溜まりはあるのですが全体としてのイメージは砂浜のビーチという感じではないので飛び越します。
そのため堂ヶ島の乗浜海水浴場から始まりです
乗浜はグレー系とカーキ系が混じっている感じですね。どちらとも言えそうな色合いです。
明度は明るめかと思ったのですが、前の記事の安良里よりも少し暗めとなっています。
そして一番の違いはわりと大きめな粒子が混じっていることです。
安良里の砂をベースに、白系と濃いめグレー系の少し大きな粒子が混入している感じです。若干濃いめグレー系の粒子が多いのか、全体的な明度は下がっています。
こちらは堂ヶ島という景色の良い立地で明るいイメージだったので意外な結果でした。
ただ粗めの白い粒子が輝いて見えるので砂浜として見た感じは安良里よりも明るい砂のような気はします。
白い粒子の正体は貝などもあるようですが、多くはこの堂ヶ島付近の岸壁に露頭している軽石凝灰岩系の岩が崩れたものではないかと推察します。
堂ヶ島周辺は軽石凝灰岩の地層が白く露出しているので海岸線が綺麗で観光の目玉となっている地域です。
次は大浜海水浴場
こちらはほぼ乗浜の砂と質的には変わらないのですが、若干明度は落ちています。これは濃いめグレー系の粒子が多めなせいかと思います。
大浜は隣に西天城山系から流れてくる仁科川の河口がありますが、もしかするとそこからグレー系の砂が流れ込んでいるのかもしれません。
そう考えると一つ前の乗浜の砂は、安良里方面の砂とこちら仁科川から流れた砂、堂ヶ島周辺の白い地層が生み出した白砂が混じっているのではないかと考えられ、何となくですが納得できそうな気もします。何となくですがw
次はいよいよ西伊豆でも南に位置する松崎に入ります
まずは松崎海水浴場
こちらの砂はこの地域では一番明度は暗めです。
粒子はとても細かくて手触りは良いですね。
先ほど明度は暗めと書きましたがそれはあくまでも「この地域の砂としては」、という囲いの中でのことです。
面白いことに松崎の砂に一番質感や色が似ているのは東海岸の今井浜、河津の砂だったりします。
今井浜の方は白い粒子の混入が多く見られます。松崎の方では少なめです。今井浜の白い粒子が下田方面から来たと考えると納得?
そして大本の砂ですが、松崎には同じ湾に那賀川があります。
この川もまた天城山系から来ているのですが、源流を辿ると同じ山塊から河津方面に河津川が流れていることが分かります。
この二つの源流がけっこう近くなんですよね。
つまり同じ、あるいはよく似た地層を源流に抱えているため河口から流れ出る砂が似たものになっている可能性はあります。
あとは周囲の環境で若干の違いが出ていると。
まあ、科学的分析をしているわけではないのであくまでただの与太話ですがw
次は岩地海水浴場です
ここは伊豆半島でもかなり特殊な砂です。
ごらんのようにかなり綺麗です。
明度だけで判断するともしかするとここ岩地の砂が伊豆で一番明るいかもしれません。
まぁ、下田と僅差ですが。
ただ色味的には薄く彩度では低めになっています。
これはなかなか高レベルな対決です。
岩地の砂は同じ伊豆地方でも他では見られない砂です。
粒のサイズや明度などから比較すすると下田の砂に近いのですが、カーキ色の粒子は少なく感じグレーの粒子も多いのです。
写真ですとちょっとわかりにくいのですが実物で下田の砂と比較すると全体として明度はやはり岩地の方が気持ち明るいです。
強引に安良里と下田の砂を混ぜれば近い色合いは作れそうですがそれでも明度が足りません。
となると何が足りないかと言えば白い粒子です。
で、実はこの地域には心当たりになるものがたくさんあります。
伊豆半島の南側では白浜層群という地層が多く露頭しています。
これは伊豆半島がまだ浅い海底だった時代に噴火の噴出物や灰が沈殿して凝固した地層です。
その層群の中には堂ヶ島に見たれるような軽石凝灰岩や南伊豆でも見られるもっと白い凝灰岩の層があります。
そしてここ松崎には有名なジオスポットである岩室洞が存在するのです。
これは柔らかくて加工しやすい石を切り出した石切場跡ですが、白浜層群凝灰砂岩層からなっています。
件の岩室洞は岩地にほど近いですし、もっといいますと岩地のところにある萩谷崎の崖もまたこれらの地層でできています。
この辺りから崩れたものが砂となって湾の奥に堆積したと考えるのが妥当かと思われます。
ただ、一つ手前の松崎ではこの砂は見られませんし、岬を一つ回ったお隣の石部の砂もまた違う色をしています。
海流のせいでたまたまこの岩地の入り江にだけこれらの砂が多く堆積しているのでしょうか。そうとも考えられるし、それ意外にもありそうにも思えてしまいます。
海流を視野に入れるとさらに南から運ばれてきた可能性も捨てきれず――もやもやしますw
ここ岩地は昔から綺麗な砂だと思っていました。
今回の調査でそれは事実として証明されました。
岩地の砂が伊豆では一番明度が明るい砂で間違いなさそうです。
ただ色味的には下田の砂に比べて乏しいので華やかさでは劣るかもしれません。それでも海も綺麗な発色をしますし、捨てたものではありません。
続いて石部海水浴場の砂です
こちらは岩地の次に現れるビーチのためどうしても比べて見劣りしているように感じてしまいます。
しかし、前述のように岩地と比べると大概の砂は明度で負けてしまうのでしかたありません。
石部はグレー系に分類できます。
安良里、クリスタルビーチの砂からもう少し色味を抜いて粒子をちょっとだけ粗くした感じです。
ですからグレー系の中ではかなり明度の明るい砂です。
グレー系だと近くは松崎が上がりますが、石部の方が明らかに明るい色をしています。
これはこれでかなり特殊に見えます。
強引に見ますと岩地の砂に松崎の砂が混ざり込んでいるような雰囲気です。粒子が大きいものが、こちらの岸辺に寄せられたのかもしれません。
もしくはどこかから運ばれてきた?
――そう思えるくらいカーキ成分が少なめで、それでいて明度は高く西伊豆の砂にしてはちょっと変わった印象で面白いです。
お次は雲見海水浴場の砂ですね
こちらは一目見て色味が強いです、濃厚なイメージです。
これまで宇佐美や土肥などで赤味の強い砂を見ましたが、色味自体は雲見の方が強いかもしれません。
ただこちらは黄色の成分多めです。
でもこれは完全にこちら雲見の色ですね。
雲見には太田川の河口がありますが、川を見ると明らかに川底が黄色みを帯びています。
これはこちらの上流から流れ出る土砂がその色味を帯びていると見て間違いなさそうです。
色味が濃い砂と言えば他にらららサンビーチがありますが、こちらは比べると明度的には随分と暗めになります。
お隣の石部よりも若干暗めで松崎よりも明るいです。
粒子は極小ではありませんが、下田の普通サイズくらいなので滑らかです。
う~ん、雰囲気としては土肥っぽいですね。
色味は雲見の方が若干強いですが、同じ系統に思えますね。どちらも西伊豆の砂という感じです。
西伊豆の砂まとめ
西伊豆の砂は変化に富んでいてとても面白いです。
この地域は人工ビーチも多いですし、天然のビーチも自然が生み出した景観であり、その差もさることながら、天然物それぞれに特色があって一段と興味をそそられます。
砂は鉱物の粒の集りですが、それはやはりどこかから運ばれて堆積したものであり、その原因は必ずあります。
伊豆、特に南伊豆から西伊豆は白浜層群が入り乱れていますし、山と海が近くて狭い範囲で環境が異なるので様々な結果が誕生します。
そのため少し移動するだけでこれだけ違う性質の砂が見られるわけで、とても興味深いです。