今回は人が少なく新型コロナウイルス災禍が広まっている最中にもってこいの場所です。 ただし、いろいろと問題が……
それについては折々触れます。
狩野川放水路の採石場跡
よく見れば石切場
ここは内浦にある狩野川放水路の出口にあたります。
狩野川は伊豆半島の天城から始まり北上しますが、太平洋沿岸のこの辺りの地形の感覚からすると逆向きに流れているように感じるへんてこりんな川です。
通常は内陸部が北になりますから、大まかには北から南方向に川が流れているのが自然な感じです。
どうもこれは島だった伊豆半島が本島に衝突したせいなのかもしれません。
河口が本来海側だったのが、伊豆半島が本島に衝突して内陸になってしまったためにこのような感じになってしまったような気がします。
日本海側に行けばおよそ北向きに川が流れているのと一緒です。
それが伊豆半島いな、伊豆島が太平洋から移動してきて日本列島に衝突し、無理矢理に一つになったため、本来海に落ちていた川が内陸部になってしまったのでしょう。
こうして書いていても壮大すぎてピンと来ませんけどね。
でも川にとっては堪ったものではありませんよ。
水は高いところから低い場所に流れるのが道理。
より低い場所を求めて水は流れますが、衝突による褶曲と断層で地形は滅茶苦茶です。
そんな地形を縫うように水は流れ、出口を求めて現在の沼津の河口にたどり着いたものと思われます。
その為狩野川はとっても流れが悪く氾濫しやすいのです。
更に拍車をかけるように源流となる天城山系は国内でも有数の雨量を誇っています。災害を起こすな、と云う方が無理のある地形なのです。
そんな災害の記録に残るもの中で最たるものが1958年の狩野川台風であり、その災害を教訓として回避すべく川の水が増えたときに逃がすようにこちらの放水路が作られたのです。
それでも昨年は台風の影響で函南あたりがかなり水没しましたが……
でもこれは天城の方からの増水ではなく、東の山地からの水が溢れたものなので、狩野川のせいではないのですが。一応、放水路は昨年の台風でも大量の放水を行い大活躍していました。
今回はその狩野川放水路自体ではなく、そこに見られる地形のお話です。
放水路の出口ですが山を刳り貫いてトンネルが通っています。
その周囲をコンクリートで固めてあるように見えますが――ちょっと待ってください。
確かにコンクリートの部分も多いのですが、よく見るとあちこちの壁面が白っぽい石でできていることが見てとれます。
よくよく観察しますと崖に変に水平な段差もありますし、何かを刺したような小さな穴が幾つも穿たれている場所もあります。
そうです、この河口を取り囲む山の部分が全部石を斬りだしていた場所なのです。
この辺りはもともと石の産地で周囲には大小無数の石切場が存在していたようです。
明治期や関東大震災後などにこちらからたくさんの石を出荷していたとのお話しもあります。
こちらでは坑道ではなく山を削り露天で切り出していたのでしょうか?
随分と大きく開けていて石を切り出していたことが見てとれる場所です。
露出している白っぽい岩盤は伊豆のあちこちで目にすることができる凝灰岩でしょう。いわゆる伊豆石ですね。
凝灰岩は柔らかく加工しやすいので建築資材として塀や壁、家の基礎、敷石として重宝され色々な場所に使われてきました。
別記事で紹介した韮山反射炉の外壁も伊豆の凝灰岩を使っていましたよね。ここもそのような石を採取する石切場だったということです。
こちらの凝灰岩も山一つ分くらいありそうですが、かつて海底火山によって噴き出された灰が海の底に堆積して固まったものです。
それが伊豆半島が本州に衝突する際にゆっくりと持ち上げられて山になりました。
そう考えて周囲を見渡すとなんとも人の手に余る自然の力を感じます。
しかしその大自然を相手に昔の人は手作業で石を切り出したのですから人の力も侮れません。
動力など無く、人力でそれらのことを行ってていたのですから。
壁の鑿の跡、一つ一つを人が鎚を振るい砕き切り出した証拠なのです、記録なのです。
いずれは風化して消えてしまうものなのでしょうが今の内ならば見て記憶することが適います。
ただ残念な事に、現在は遊歩道の入口にロープが張られて奥までいけません!
訪れたのも数年前です。だから今まで記事にしていなかったのですが……
河口の橋の袂に駐車場もあるのですが、こちらも柵があり車を駐められません。
小型のバイクや自転車なら間から入れますが……
元々凝灰岩は加工し易いことからもわかる通り、柔らかいので脆く風化しやすい特徴があります。
近年は台風も多く激しい雨も降りますので現地のコンディションは最悪なのでしょう。
現在、奥の壁面まではいけませんが入り口の駐車場を囲む壁面もまた、かつての石切場の跡で垂直な壁が立っています。
ここでもよく見ますと綺麗に鑿で石を切り出した痕跡が見られますよ。
この先、再び整備され安全を確保して見学を再開してい欲しいものです。
できれば海側の口野千畳敷の方もお願いしますよ。
狩野川放水路の採石場跡の駐車場など基本情報
地図
狩野川放水路の採石場跡への近隣からのアクセスと駐車場
414号の沼津と中伊豆、西伊豆に向かう17号と別れる交差点の場所となります。
414号を西から来てトンネルを抜け橋を渡る手前、左側に駐車場がありますが柵があるため車は入れません。
バイク、自転車ならばポールの間から入ることが出来ます。
あまりお勧めできませんが、御場隧道を抜けた左手に防災倉庫がありその付近なら道路脇に何とか車一台位なら止まれるスペースはありますが駐めて良いものかどうか……
口野切り通し
かつての幹線道路か
国道414号を西から来ますとさきほど紹介した狩野川放水路を渡って信号機に突き当たります。
左は中伊豆へ右は西伊豆へ向かう分岐点ですが、正面真っ直ぐにもトンネルがあります。「御場隧道」と呼ばれるそれを抜けると道が二手に分かれますが左の山方向へ登っていきます。
道は山を登っていきますが斜面にも鑿で削ったとがあったりと、この辺りはかつて手彫りで道が切り開かれたことが伺えます。また同時に壁面には穴がたくさん穿たれた跡があり、ここもまた多くの石切り場があったこともわかります。
道を進みますと、この先全面通行止めの看板が道端にあらわれます。
とりあえず突き当たりまで行きますと隧道の入口となりますが、しかしそこは封鎖され全面通行止めとなっています。
またかよw
夏場は草がうっそうとしていて道があるようには見えません。
覗いてもバリゲートの先には大きな落石があり、その先は左に折れていて見えません。
しかしバリゲートの横から踏み分け跡が中に続いていて、どう見ても日常的に誰かが使っているようにしか見えませんでした(汗
この地区の方が歩いている可能性が高そうです。
カーブの処のミラーはそれ程古くはなさそうです。
覗いた感じですと切り通しも高くなかなか立派なものです。
こちらも凝灰岩なのかもしれませんが放水路のあたりで見たものとはかなり趣が異なります。
岩肌も白くなく、数センチの層がミルフィーユのように積み重なっているかのような浸食跡があります。
堆積した層が別れていて大きな固まりになってないんですかね。
とても伊豆石が採れそうには見えません。
それどころかすごく脆そうにも見えますし、実際、崩れた堆積物で道が狭くなっているので脆いのでしょう。
これでは隧道を掘るのは怖そうですから、もしかしたら脆い地層を利用して切り通しを削ったのかもしれません。それでも手掘りでこれだけのものを作るとなると気が遠くなりますが……
『江間村沿革史』によればこちらの切り通しは明治35年に開通しており、ここを切り通しにするのに30メートル以上掘ったとなっていますが、距離のことなのかな?
さすがにそこまでの高さはなさそうなのですが、それでも見上げるほどの断崖です。
こちらは近年まで生活道として生きていた隧道ですからもちろん反対側もちゃんと道に接続しています。封鎖されていますが。
放水路が完成した当時の写真には脇にトンネルがまだありませんから、車もこちらを通り抜けていたのでしょうか?
414号の狩野川放水路脇の道、トンネルと信号機の中間くらいに山に入っていく道があります。
こちらもやはりすぐに通行止めの看板が現れます。こちらからもよく見れば奥のカーブミラーが見えます。
こちらから見た方がよりはっきりと切り通しがわかりますね。
よくぞ掘ったという気がします。
それにしても道路の両岩が美しいです。
通り抜けられればいいなと思いますが、やはり定期的に歩いているらしい跡もありますし。
こちら側にコンビニもあり、切り通しの向こうにはすぐに集落もありますから或いは……車を使わなければここを通る方がどう考えても便利です。
とりあえず通行禁止なのであまり危ないところまでは近づかないように気を付けましょう。
切り通しのあちこちで崩落が起きています。訪れた時もまだ新しい場所もありました。近年は雨量なども増えていますので危険度はさらに高いかと思います。
運が悪いと本当に崩れる現場に居合わせてしまうかもしれません。
口野の切り通しの駐車場などの基本情報
地図
近隣からのアクセスと駐車場
414号を御場隧道に向かって直進、山に向かって道なりに登って行きますとつきあたりにあります。
或いは狩野川放水路脇、ホテルのあるところを山に向かって入ると辿り着きます。
どちらの口にも駐車場はありません。
路肩への駐車となります。通行止めなので車は来ないものと思いますが近隣の住民に迷惑のかかる駐め方は控えてください。
沼津 口野周辺の伊豆ジオスポット2ヶ所まとめ
今回は新型コロナウイルスが心配な現在にぴったりの場所を紹介しました。
とにかく人はいません。
何しろ立ち入り禁止と進入禁止の場所ですからw
唯一の欠点は、誰もここを訪れることができないということです。
そんな場所紹介するなよ(汗
※こちらの記事は現地へ行くことをおすすめするものではありません。できれば記事の写真でお楽しみください。