忍野八海は今では海外からも人が押し寄せている有名スポットなのに、昭和60年(1985)に「全国名水百選」に選ばれるまではそれほど有名な観光地ではなかったようで、そのことを知り驚いています。
富士山世界文化遺産13-1
忍野八海概略
未確認ながらかつてこの地一帯には宇津湖(うつこ)と呼ばれる巨大な湖があったともいわれています。
延歴19年(800年)に富士山の大噴火で宇津湖は流れ出る溶岩によって分断され、忍野湖と山中湖が誕生したと伝わっています。その後、忍野湖は徐々に枯れ果て、ついに富士山の伏流水に水源を持つ湧水池が複数残るのみとなりました。
その池のうちで富士修験の霊場、富士御手洗元八湖というものがありました。
また富士講の信者は、富士登拝の前に8つの湖沼群において水行を行うことを習いとしていたそうで、現在の忍野八海は元八湖霊場として富士講の信者が集い、江戸時代には関東一円の富士講信者に知れ渡ったそうです。
八海という呼称は富士講の人々が富士登山の際に行った8つの湧泉を巡礼する八海めぐりからきています。
またその江戸時代には各池に守護神の「八大竜王」が祀られ、出口池を一番霊場、菖蒲池を八番霊場とする巡礼路が整備されました。
ちなみに「八大龍王」は水を司る主であり、また仏法を守護する八神である天龍八部衆に所属する龍族の八王でもあり、法華経(序品)に登場して仏法を守護るとされ護法の神と崇められる尊きものです。
しかし明治期には政府の圧力の影響で富士講は廃れ水行も行われなくなり、この地はひっそりとしてしまいました。
その後昭和60年(1985)に「全国名水百選」に選ばれたことで再び脚光を得て観光地として新たに人々が集うようになったそうです。そして世界遺産登録に際し、水質、景観と霊場としての歴史が認められて構成遺産に選ばれました。
今年、久しぶりに訪れたところ、海外からの観光客だらけで驚きました。
どうも歩いていると日本人よりも海外からの方が多く感じましたね。いえ、明らかに日本人の方が少ないです。
何処でも増えていると思っていましたがここは凄いですね。まるで日本じゃないみたい――景観は日本なんですけどw
これも世界遺産になった効果なのでしょうか?
因みに忍野村は、明治7年に忍草(しぼくさ)村と内野村が合併してできた合成地名です。
忍(しぼ)は「しぶ」が転じたもので、淀んだ湿地を意味しています。
つまり忍野は八海周辺に池や湿地が多かった忍草村の地名を起源としていて決して忍者とは関係ありませんよ。
一番霊場 出口池
※こちらの池は広めで緑に囲まれているのが良いですね。まぁ、写真を撮っている側は道路で後ろは民家なんですけどね。でも湖の向こう側のお稲荷さんはなかなか神秘的な雰囲気を感じさせてくれます。紹介しておいてなんですが、人がたくさん来たらそれはそれでせっかくの雰囲気が……人気にならない方がのんびりと撮影できて良いかも。
随感
出口稲荷大明神の神社に隣接する八海の中では一番大きな池となります。
周囲はあまり観光化されておらず今尚、自然豊かで緑に覆われており静かな佇まいを残しています。
観光地の中心から遠いのが幸いしているようですね。
駐車場はありませんがすぐ近くの畑の前が多少道路が広いので短時間、小型車くらいなら駐められますがあまりお勧めできません。バイクならある程度は余裕ですね。ちょっと他よりも遠いけど歩いてくるのが無難です。
道路から池を挟んで小高い場所に稲荷大明神がありとても感じがよくて好きです。周囲も木々に囲まれているのが尚、好感度をアップしています。せっかく訪れたのですからできればもっと多くの人にこちらも見てもらいたいものです。
伝説
出口池の湧水は「清浄な霊水」と呼ばれ、行者たちはこの水で穢れを祓ったそうです。またこの水を携えることで無事に登山ができるという昔からの言い伝えもあり別名を精進池ともいうそうで、確かにここは清涼なイメージがありますね。
祀られている竜
難陀竜王と云う竜で「難陀」とはサンスクリット語で「歓喜」を意味し、国を守り、適当な時節に雨を降らして百姓を喜ばせる竜王とのことですが、正直ピンと来ません。
基本情報
地図
公式情報
池の情報
面積 1,467平方メートル 水温 約10度~13.5度(年平均) 湧水量 0.265立方メートル毎秒 水深 0.5メートル
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